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Critique

hyper materiality on photo

港千尋+後藤繁雄

発行年: 2015.5
発行元: アートビートパブリッシャーズ
仕 様: 159頁
TOLOT heuristic / Shinonomeにおいて開催された、G/P galleryプロデュースによる展覧会「Hidden Sense of Japanese Photography 2  hyper-materiality on photo」の記録冊子。これは、2014年にオランダ・アムステルダムで開催されたアートフェア、Unseen Photo Fairにて企画したスペシャルエキシビション「anima on photo – Hidden sense of Japanese Photography」に次ぐものです。
港千尋、後藤繁雄の両氏がキュレーターとなり、小山泰介、横田大輔、吉田和生、川島崇志、赤石隆明、藤本涼、田中和人、滝沢広、三田健志、山崎雄策、小林健太ら11人の若手写真家を紹介。

写真のハイパーマテリアリティ
本展は、昨今の日本現代写真において浮かびあがってきた、「センシングとマテリアライゼーション」をテーマにキュレイションするものだ。それは、現代美術における「モノ」(オブジェ)の文脈と、今、急速にデジタルによる加工やアウトプット(出力やプロジェクションなど)の多様化が進み、またフォトイメージがかつてないほど人間の環境の主要素となった進化軸との交差が、どのような「ハイパーな写真」を生み出していくかを検証しようとするものだ。
日本の戦後美術は、世界の美術史においてユニークな発展を見せた。敗戦の破壊と消失の連続の中で、西洋においては、人間の自己表現の「果て」と思われた「モノ」(オブジェ)を、逆に「可能性」ととらえ、「具体美術協会」や「もの派」を生み出した。背景の深層には、日本人の身体に内在する「アニミズム」からくる世界観と、センシングの仕方が根強くあると言ってよい。その感覚は、「モノノアワレ」の物語や、俳句、禅の庭におけるインスタレーションを生み出したものと同じである。
写真の流れの中にもこのような「アニマ」の力が一貫して流れているということを我々は、2014 年アムステルダムのUnseen Photo Fair において、『anima on photo』という展覧会のキュレイションによってプレゼンテーションした。
しかし、今回はただ「モノ」の力に注目するだけではなく、写真のデジタル化によってひきおこされた事態が、現代写真において「新たなマテリアライゼーション」を生成しつつということを指摘したいと考える。例えば、横田大輔におけるデジタル・エクトプラズムとでも言うべき『matter』シリーズ、赤石隆明の『UBRM』シリーズにおける「写真化と物化」の執拗な反復作業…。これらは単なる「抽象写真」や「写真によるキュビズムの試み」とはまるで別のものとしてとらえられなければならない。新しい事態としての「モノ写真の反乱」を我々はどのように直視し、未来への道標とするのだろうか?

港千尋+後藤繁雄